時鳥

 啼かぬなら殺してしまへ時鳥
 啼かぬなら啼かせてみよう時鳥
 啼かぬなら啼くまでまとう時鳥
 信長、秀吉、家康の性格の違いが表れている有名な句である。
 信長は延暦寺に対し大量殺戮を行い、秀吉は無理といわれた築城を一夜でやってのけた。家康は、大阪城の外堀を埋て後、豊臣家が降伏するのを待った。
 この三句に詠み込まれている小鳥だが、なぜカッコウやウグイスではなくホトトギスなのだろうか?
 下五の座りのよさもあろうが、武士
が好んだ鳴き声がホトトギスなのではないか。
 春告鳥の呼び名のあるウグイスや、姿はホトトギスに似ているカッコウは一種のんびりとした鳴き声だ。それにひきかえ、ホトトギスには気迫がある。
「てっぺんかけたか」「本尊かけたか」「特許許可局」と聞こえるとされ、昼夜を問わずに鳴くのも特徴だ。
 その昔、闇夜にこの声を聞けば、白刃が空を切ったように思えたのではないだろうか。
 『日本国語大辞典 第二版』によると、「ほととぎす」は、中国東北地方からヒマラヤにかけて、さらにインドネシアおよびマダガスカルに分布する渡り鳥である。日本には五月に渡来し八月から九月にかけて南方に帰る。
 あやめ鳥、いもせ鳥、うない鳥、さなえ鳥、たちばな鳥、時つ鳥、夕かげ鳥、死出の田長、たま迎え鳥、など異名も多彩であり、あてられる漢字も杜鵑、時鳥、子規、不如帰、郭公、蜀魂、杜宇、沓乞、催帰などきわめて多い。
 夜に鳴くという習性から、平安時代には「冥土からの使いの鳥」「懐古の鳥」とされた。また、渡って来る時期が毎年決まっているため、東北地方の農家では「ほととぎすが鳴くから田植えせよ」というように農事暦代わりの鳥でもあった。
 「初音」はウグイスを指す春の季語であるが、夏の到来を告げる初音はホトトギスの鳴き声。古人は四季の移ろいに敏感で、その兆しが現れることを心待ちしていた。季節が来ると奥山から人里に降りてくると信じていたそうだ。そのため「山時鳥」という季語が用意されている。

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