蒲公英

たんぽぽ。「蒲公英」という字をあて

るが、『日本国語大辞典 第二版』に

よれば、「ほこうえい」とはたんぽぽ

の漢名。漢方薬では開花前に採取し乾

燥した葉をいい、解熱・健胃薬などに

用いる。

 では、和名の「たんぽぽ」の呼び名

は、何に由来するのか?

 たんぽぽは花の形が鼓に似ていると

ころから、あるいは茎の両端を細かく

裂くと、そり返って鼓のようになると

ころから(つづみ)(ぐさ)とも呼ばれる。この鼓の

「タン・ポン・ポン」という音の連想

から「たんぽぽ」と呼ばれるようにな

ったともいわれる。メルヘンのような

ネーミングである。

 昔から野山や農村で見られる植物だ

けに方言が多い。たんぽな、たあんぽ、

ちゃんぽぽといった、本家が類推でき

るもの。かちかち、がんぼおじ、ぐじ

な、くまくま、ごご、たびらこ、とん

ぼのちちなど、他人のようなものまで

バリエーションに富んでいる。

『日本国語大辞典 第二版』別巻の方

言索引を用いて、辞典本文を参照すれ

ば、それぞれの方言の地名がわかり、

いかに日本列島くまなく分布している

かに気づく。

 たんぽぽはキク科の多年草で、日本

には、エゾタンポポ、カントウタンポ

ポ、カンサイタンポポなど約20種が自

生し、欧州原産のセイヨウタンポポが

帰化している。

 セイヨウタンポポは明治時代に食用

として北海道に渡来した。現代でも花

天麩羅(てんぷら)にして、若い葉はサラダに、

()でてお浸しにしたりすることもある。

根はコーヒーの代用になるともいう。

帰化種が、全国の都市近郊に勢力範

囲を急速に拡大しているそうだ。在来

種を駆逐しそうな勢いは()まず、生態

系に深刻な事態を招いているという。

 多くの在来種と違って、セイヨウタ

ンポポは単為生殖により自己増殖する。

綿毛は風にのってどこまでも領土を広

げているのだ。 

 蒲公英やローンテニスの線の外

             正岡子規

 空港のたんぽぽ地に張りつきて

             後藤夜半

 テニスや飛行機といった欧米文化の

風景の中で詠まれているたんぽぽも西

洋種であろう。異国で生きる植物のた

くましさを感じざるを得ない。

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