外気はまだ肌に痛い。しかし、鼻腔

をくすぐる微風は、清冽だが次の季節

を感じさせるほのかな甘さを含んでい

ることがある。

 都会の雑踏の中ではこういう感覚は

ない。暖かな日の朝、雑木林の脇や畦

道を歩くとき、季節の移ろいとともに

ある田園生活の愉しさを実感する。

 「早春賦」を口ずさみながら、梢に

目をやれば次の命が芽吹いている。そ

の枝をぬって鳥たちが盛んに飛び交う。

雀ほどの大きさで敏捷に動く緑褐色の

小鳥が鶯だ。

 鶯は春告鳥とも呼ばれ、季節の到来

をいち早く知らせてくれる。藪鶯とい

う名もあるとおり、主に低い茂みに棲

息している。 

 分類上はヒタキ科のウグイス亜科に

属している。ウグイス亜科は約三〇〇

種と非常に種類が多く、日本には約一

〇種が住んでいる。

『日本国語大辞典 第二版』によれば、

鶯は春の鳥と思われているが、囀りか

たが季節によって異なる。早春の「ホ

ーホケキョ」、夏は「チャッチャッ」

という地鳴き。これは笹鳴きともいう。

また、何かに驚いたときに「ケッキョ

ケッキョ」とも鳴く。これは「鶯の谷

渡り」と呼ばれる。「初音」といえば

鶯の初音を指す。また、「法、法華経」

と聞こえるところから「経読み鳥」と

も。さらに、「ホーホケキョ、ヒトク

ヒトク」などと聴き取れるため「人来

鳥」。また、「ももちどり「はなみど

り」「あたごどり」「うたよみどり」

などの異名をもつ。多彩な名前から鳥

の名を特定するには、『日本国語大辞

典 第二版』別巻の漢字索引・方言索

引が便利だろう。

 鳴き声のよさから昔は飼い鳥として

珍重されたが、現在は飼育には許可が

必要だ。

 鶯は春の季語だが、春が過ぎても鳴

く鶯を「老鶯」といい季語は夏になる。

万葉の昔から人々に親しまれており、

和歌では早春の花である梅との組み合

わせが多い。梅に鶯の構図は絵画、工

芸の題材としても多用されている。

 プロ野球などで選手の名前をアナウ

ンスする女性を「うぐいす嬢」という。

彼女たちは美声の持ち主ばかり。その

声から顔かたちを想像するとスタイル

抜群の美人ということになるのだが、

実際はどうなのだろう。


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