なぜか惹かれて
1983年(昭和53年)に朝日新聞社から出版された、朝日コンピュータシリーズの4巻。20年前にイメージされた近未来コンピュータ社会の図である。コンピュータによりビジネスがどう変わってゆくかを解説している。コンピュータの広告に携わり始めた頃であり、仕事への理解を深めるために購入した。当時はNECから名機PC-9800シリーズが発売されたばかりであり、本体だけで30万近かった。個人でおいそれと所有できる代物ではなかったが、漢字が表示できるパソコンとしては安かったのである。本の内容はともかく、表紙に描かれたイラストに興味をもった。
山小屋の情報ルームである。山頂にはパラボラアンテナが設置され、衛星からの情報がパソコンのディスプレイに表示され、その内容がプリントアウトされつつある。壁面には大型テレビとレーザーディスクがはめこまれている。マイク付きヘッドホンをしたこの男性は何者か?雑誌のタイトルからして樵や猟師ではないだろう。ともかく、ビジネスの現場から遠く離れた場所でも情報のやりとりができ、仕事がはかどっているようである。フリーのコピーライターだった私は、この世界が非常に魅力的に映った。
20年前のOSはまだMS-DOS以前だった。ディスプレイは液晶のようだが、暗い画面にグリーンの図形が表示されている。ワークステーションは白い画面に黒い文字を表示できたのだから、イラストレータはもう少し勉強すればよかった。ビジネス間はデータ通信が主流で、インターネットはまだまだ先の話であった。
やがて私はPC-9801Fを購入してとりあえずワープロソフト「即戦力」で原稿を書くことになる。表計算ソフトはExcelの前身Multiplanがあったが98000円という馬鹿高で、個人には容易に手が出せなかった。次にG3のファクシミリをリースして書いた原稿をFAXで送るようになった。次にPC-98からMacに乗り換えFAXソフトで原稿をデータに変換して送ることができた。都内に事務所を構えなくても自宅で仕事が行えるようになった。バブルが崩壊して現在の田園地帯に移り野菜作りを始めた。インターネットの時代になり、情報を受ける・送るがパソコンの画面だけで行えるようになった。表紙に惹かれて20年。やっとこの男性と同じようになった。

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