花水木
いつの間にか葉は散ってしまい、赤い実がモノトーンになってきた庭で一層鮮やかに見える。これを狙ってムクドリやカラスがやってくる。消化されずに排泄された種子がやがてどこかで芽吹くに違いない。実の赤は子孫繁栄のために鳥たちに存在を知らせるシグナル色なのだ。真冬には実もなくなり花水木は丸坊主になるが、初夏にはまた瑞々しい葉をつける。
●樹木の生涯は根が枯れたときに終わるが、四季のサイクルをもってひとつのステージが完結する。つまり2つの時間を生きている。人間はどうだろう。生れたときからの経過と1年間の生活が植物のようにめりはりが効いていない。特に社会に出ると日々の生活に追われ、1日はもちろん365日が車窓の風景のように通り過ぎてゆく。齢を重ねるたびにこの傾向は強くなってゆくようだ。その間、不摂生がたたり生活慣習病などに見舞われる。年輪を刻み風格のある樹木のようになるには容易ではない。

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