Movie/Drama |
■2004年2月28日 2つの戦争映画続き <ブラックホーク・ダウン>2002年3月30日劇場公開。 監督は「ハンニバル」「グラディエーター」のリドリー・スコット。 俳優は知名度のない人ばかり。 かえって、本物の兵士らしく見えて、ドキュメンタリー風を際立たせていた。 ☆映画の舞台 舞台はアフリカ・紅海の入り口に突き出た「ソマリア」の首都「モガディシュ」 (昔はモガジシオ、モガディシオと発音したように思ったが) アフリカの多くの国家がそうであるように、 ここも部族間の主導権争いが頻繁に起こっていた。 地域紛争があると、「世界の警察・USA」はどこへでも派兵する。 映画「ブラックホーク・ダウン」は、事実に基づいて作成されている。 ☆アフリカ植民地の歴史 19世紀に資源の豊富なアフリカ大陸に目をつけたヨーロッパ列強は 勝手にアフリカを分割してしまう。 この結果、19世紀末には、主要部分はイギリス・フランス、中央部はベルギー、 南西部はドイツ、北東部はイタリアが領有し独立国はリベリアとエチオピアのみとなった。 ソマリアは北部が英国、南部がイタリア保護領となった。 アフリカ大陸独立機運の高まりにより1960年、英・伊から独立。 「ソマリア民主共和国」は、91年に内戦が勃発、 2004年の現在に至るまで対立氏族間の抗争が続いており、 全土を実効的に支配する統一政府は存在しない。 植民地時代は英・伊に頭を抑えられていたが、その重石が外れたら 部族間抗争が頻発し、収拾がつかないという、 日本でいえば戦国時代のような有様が40年以上続いているわけ。 ☆映画の背景 ソマリアへの国際赤十字からの支援物資は、 ババルギディル族の指導者アイディード将軍の一派によって略奪される事態が続いていた。 その物資の保護と部族間の停戦を確保する目的で、国連は米海兵隊を含む平和維持軍を派遣。 一応の成功を見るが、それを自身の権力を阻むものとみなしたアイディードは、 24人の国連パキスタン人兵士を殺害。 ヘリを使って報復のロケット攻撃を行ったアメリカに対し、宣戦を布告する。 ☆ 誘拐作戦 1993年10月3日、現地の米タスク・フォース・レンジャー司令官ウィリアム・F・ガリソン少将が、 部下のレンジャーとデルタ部隊に、アイディードの副官2名の捕獲作戦を命じた 司令官は敵を過小評価し作戦は1時間で終わると兵士たちに告げていた。 地上からのトラック輸送部隊とヘリからのデルタフォースの2面作戦は米軍絶対優位のはずだった。 戦闘ヘリ「ブラックホーク」も援護で参戦。 ところが、である。アイディード将軍の民兵は手強かった。 米軍より貧弱な武器であったが、市街戦が行われたのは勝手知ったる庭みたいもんだ。 新兵がヘリから降下中に墜落。もたついているところをロケット砲で打ち落とされてしまう。 それから壮絶な市街戦が始まる。 2時間を越す映画の90%は戦闘シーンという、派手なドンパチ映画。 ドキュメンタリータッチの迫真ものであった。 ☆指揮は安全なところで 最近の局地戦の展開方法が珍しかった。 作戦が展開される地域を偵察ヘリがカメラで収め司令部に映像を送る。 司令官は画面を見ながら作戦を指揮するのである。 敵側の秘密会議が行われる場所の特定は現地の協力者を使う。 彼は乗用車の屋根にテープで×を貼り付け目印にする。 上空の米偵察ヘリがそれを映し出す。司令官のGOサインで 地上機動部隊、空からヘリ部隊が会議場となったホテルを急襲する。 しかし、上空に不審なヘリがホバリングしていれば 民兵のRPG(ロケット砲)に狙われると思うのだが、それはなく 最新映像を送り続けていた。 1時間で終わるはずの作戦が15時間に及び、米兵は飲まず食わずで戦う。 (こんなすさまじいクソ・リアリズムシーンもあった。 撃たれた兵士の動脈が骨盤にからんだとかで、 仲間に体をおさえられ、衛生兵が手で腹の中をかきまわる。 麻酔をしていないから、本人は失神する。) 部隊は民兵、市民ゲリラに包囲されて徒歩で逃げ帰る部隊も出る始末。 作戦失敗が色濃くなってきても、基地に残っている部隊を繰り出す。 司令官の完全な作戦ミスでしたね。 映画を通じて戦争の悲惨さが痛いように伝わる。 ※実際、ベトナム戦以後に展開された作戦では最悪という評価らしい。 ☆2004年2月 ブラックホークダウンは10年前に実際に起こった武力衝突だ。 今、紅海をはさんだ上のほうでは、日本の自衛隊が「人道支援」のために出動している。 サマワという、かつてフセイン大統領から見離された人々が暮らす地域。 自衛隊の基地作りも着々と進行しているし、サマワの人々も好意的だ。 ソマリアと異なり部族間抗争が続いているわけではない。 イスラム教内の宗教的な対立はあるが。 宗教が国民の生活と深いかかわりをもっている。それだけに根は深い。 サマワはバクダッドに比べ安全とはいうものの、ゲリラへの不安は払拭できない。 車による進入は防げても迫撃砲で攻撃されたらひとたまりもない、という。 独裁者が倒れた今、ソマリアみたいな悲劇がないかといえば、決してそうではない。 バクダッドでは連日のように米軍のヘリが墜落し、軍用車両が攻撃され米兵が死んでいる。 厳重な警戒をかいくぐってゲリラの攻撃が行われる危険性をはらんでいるのだ。 ☆ある兵士の死 ソマリアの作戦で生き残ったレンジャー部隊所属の兵士がいた。 名をアーロン・A・ウィーバーという。 負傷した戦友の救出という「極度の勇気」という功績により、 米軍からブロンズスター勲章が授与された。ソマリア作戦の英雄である。 あれから11年後の2004年1月8日、イラクのファルージャで米軍ヘリがゲリラ攻撃により墜落、 死亡した9人の兵士の中にアーロン・A・ウィーバーの名前があった。 彼はまだ32歳だった。
<非常戦闘区域>2003年2月7日ビデオ/DVD発売・劇場未公開スペイン映画 ☆映画の舞台 旧ユーゴースラビア連邦共和国はチトー体制の崩壊により、クロアチア、ボスニア・ヘルツゴヴィナ、 セルビア・モンテネグロに分裂した。 セルビア・モンテネグロのアルバニア寄りに「コソボ」がある。 東欧はヨーロッパの火薬庫とわれるように、民族間の抗争が絶えなかった。 民族間の話は入り組んでいて非常にむずかしい。 「コソボ」にはセルビア人、アルバニア人が暮らし主導権を巡って セルビア軍とコソボ解放軍(アルバニア人)が殺戮を繰り返している。 NATOの多国籍軍がコソボ紛争解決に乗り出す。 映画は平和維持軍としてコソボに派遣されたスペイン軍の物語。 ☆物語 スペイン軍はセルビア軍とコソボ解放軍の間で「完全中立」を保ちながら 破壊された設備の修理を行っている。 所有する装備は小火器という貧弱なもの。 あるとき、危険地帯の町の電力設備の復旧命令を受ける。 制圧されている町はゲリラに占拠されていた。 スペイン兵の目にはどれがセルビア人かアルバニア人か見当がつかない。 好意的なゲリラと戦闘状態になったり、一般人を撃ってしまったり 地雷原で負傷した仲間の女性兵士を 敗走の足手まといになるので窒息死させたりする。 正義感に燃えた若い兵士だったが、理想の中立的活動など絵に描いた餅。 結果的には敵も、友好ゲリラも、仲間も、市民も殺すという不条理なことになってしまう。 ☆教訓 人道的支援といっても、戦闘状態になれば身を守るために撃ちまくらなくてはならない。 戦場に送られたわが国の自衛隊も、きれいごとを言っていては殺されてしまう、ということだ。 ☆リアル ブラックホーク・ダウンは物量作戦だったが、非常戦闘区域は小銃で応戦しながら敗走する。 ハリウッド製の戦争映画ではないからCGは使っていない。 粒子の荒れた絵作り。手持ちカメラが揺れながら追うので、妙にリアリティがあった。 死体を始末する穴と知らずに逃げ込み、 そこに大きなパワーショベルで運ばれた多くの遺体が放り込まれる。 隠れていた数人のスペイン兵士の上にばらばらと死体が投げ込まれる。 そこから這い出すシーンは地獄絵図である。 ☆他人事ではない 今回借りたのは、他国の紛争に派遣された米軍とスペイン軍の映画であった。 イラクに自衛隊が入っていることもあって、他人事と思えず見てしまった。 「戦争は悲惨の極み」を再認識させられた。 ☆日本の援助 ソマリアもコソボも日本から遠い国である。 実情は私も調べるまで知らなかった。このような国に対しても日本は積極的に援助を行っている。 地球上に日本の援助を受けていない国は、何カ国くらいあるのだろうか? 逆にそっちを知りたくなった。 ◎ソマリアへの援助実績 (1)有償資金協力(2000年度まで、ENベース) 66.06億円 (2)無償資金協力(2000年度まで、ENベース) 176.67億円 (3)技術協力実績(2000年度まで、JICAベース) 8.68億円 日本在住のソマリア人は2000年12月時点で2名、ソマリア在住邦人は1名。 ◎コソボへの援助実績 日本はは米国に次ぐ主要援助国になっている。 人的貢献は (1) UNMIKに外務省職員2名を派遣(1999年8月〜2000年末)。(なお、2002年1月時点での コソボにおける邦人数は、UNMIK等国際機関11名、NGO3名。) (2) コソボ市町村議会選挙の際(2000年10月上旬〜11月上旬)及びコソボ議会選挙の際 (2001年11月上旬〜下旬)に、いずれもOSCEコソボ・ミッションに対して、それぞれ選挙専門家2名を派遣。 (3) 国際平和協力法に基づき、コソボ議会選挙の国際監視を目的とした国際平和協力隊員11名 (連絡調整員5名を含む)を派遣(2001年11月中旬)。 |Back|■2004年1月11日 大河ドラマ「新選組」続き 過去さまざまな人物が描かれてきた大河ドラマだが、 現代物はヒットしないというジンクスがある。 必然的に歴史物になる。 誰もが知っている人物を中心に、取り巻く人々、時代背景が綾織になって、粛々と展開される。 必然的に小説も多い。 視聴者は自分なりのイメージをもっている。 「やっぱりね」「そうそう」「そうだったのか」などなど、納得しながらドラマの展開を見守る。 演出もやりにくいだろうね。 新しい歴史観で展開するのは、賭けである。ヒットする可能性もある。 歴史物は、偉大なるマンネリが好まれるようだ。 だから、演じる俳優の力量に大きく左右される。 ☆ 昨年の「武蔵」の評判はあまりよくなかった。 私は最初の1回を見て止めにした。 「つう」を演じる米倉涼子のミスキャスぶりに、がっかり。 「つう」は、ほっそりと、はかなげでなくてはいけなかった。 それがどうでしょ。 顔が大きく、肩幅が広い男みたいな女性が「つう」であった。 幻滅である。 それと、よく言われたが新之助「武蔵」が やたら目をむく歌舞伎演技だった。不自然である。 歌舞伎の舞台はオーバーな演技をしなければ 後ろのほうの観客にはわからない。 ところが、カメラはアウト、ズームが自在である。 毎回あんな大げさな所作を見せられたら疲れるだけである。 ☆ で、今回の「新選組」 SMAPの香取信吾の武蔵だが、 顔が四角で口が大きいところは近藤勇の実像に似ている。 台詞はあえて現代調にしたのだろうが、違和感がありますね。 全国の「新選組」フアンもがっかりしているだろうよ。 単発ドラマなら愛嬌で許されても、1年間続くドラマで ちょんまげを結った現代劇を見せられてはかなわない。 オーソドックスがいいんだよな。忠臣蔵だってそうでしょ。 香取君やその他若手陣の登用で、彼らのフアン、 今まで大河ドラマとは無縁だった若い視聴者層の獲得ができると思っているのだろうか? 佐久間象山を石坂浩二がやっていたが、 もっとあくの強い顔の長い俳優のほうがよかったね。 でも、浦賀に入った亜米利加艦隊はリアルでしたね。 |Back| ■2004年1月2日 「竜馬が行く」続き ●岡田以蔵 この長時間ドラマの出色は「人切り以蔵」こと 「岡田以蔵」にかなりスポットが当てられていた点ですね。 高杉瑞穂という俳優さんが扮していました。 目がきれいでしたね。しかし、憂いというか哀しみというか、 出身階層が低いために殺人マシンとならなければならなかった ニヒルなまなざしが印象的でした。 藩主命により土佐勤皇党は弾圧されるが、勝海舟との約束を守り 刀を抜かずに捕縛される。 獄中の拷問にも自白をしなかったが、心のよりどころとしていた 武市半平太からの「毒入り握り飯」の差し入れにより、自分の立場を知ることになる。 3つあった握り飯の2個目で毒入りと気付き、 3つ目をやけくそのようにほおばる。胸がつまるシーンでした。 彼は身分が低かったために「斬首」。武市半平太は武士の作法、「切腹」で果てます。 ●竜馬に惚れた女性たち 土佐藩重役の娘、千葉道場主の娘など身分の高い人たちの娘から思いを寄せられます。 それと、妻となる「おりょう」。みんな丸ポチャの娘ばかりでしたね。 「おりょう」を幼女にした「お登勢」も年増ながら、 初めのうちは竜馬を心憎く思っていませんでしたね。 「渡辺いっけい」演じる藤兵衛が、3つのだんごを見せながら 3つ目をはぐらかしてしまいまいましたが、それがお登勢でした。 お登勢を演じた若村麻由美はNHKの朝の連ドラでデビューした女優さんですが 最近は時代物でよく見かけます。かなり、色っぽくなってきました。 「おりょう」に「今夜は竜馬さんのところに行っておあげよ」なんて 養母らしい物言いをしますが、本人は体が火照って川風に当たっておりました。 ●松本一家総出演 竜馬が染五郎、大浦お慶が松たか子、半平太の妻が松本紀保、松平春嶽が幸四郎。 まとめて出れば、制作側のギャラ交渉が多少有利に働いたのかな?。 ●ラスト・サムライ 竜馬が死んで、彼の播いた種は実を結ぶ。 維新の主役級だった西郷隆盛は、征韓論・征台の役をめぐって下野する。 それから7〜8年後に士族の反乱が西日本に頻発し 明治10年(1877)西郷を祭り上げた「西南戦争」勃発する。 一方、南北戦争の英雄、ネイサン・オールグレン大尉は 激しく変わり行く社会に適応できず失意の日々を送っていた。 南北戦争の終結は1863年。日本は文久3年。 4年後に死ぬことになる竜馬が奔走していた頃にあたる。 オールグレンは南北戦争終了後、インデアン討伐に参加したようですが、 日本に来るまでの約10何年間は魂がさすらっていたわけだ。 ●勝海舟 ひょうひょうとした味が売りの柄本明が演じておりました。 べらんめえ口調の勝安房をよく表現していたけど勝はあんな馬面ではないよね。 勝海舟の妹の旦那である佐久間象山みたい。 勝安房は江戸無血開城の立役者、異色の幕臣として人気があります。が、 佐々木譲さんの長編小説「武揚伝」に出てくる勝安房は、 度量の狭い卑屈な人間として描かれています。 最近、中公文庫版が完結したようです。面白い本ですから、一読をおすすめ! ●新撰組 「竜馬が行く」にも登場する「新撰組」ですが、 いよいよ1月4日からNHK大河ドラマがスタートします。 (間違いでした。失礼)11日からかな。 私、大好きなんですよ。この男の集団が。 農民出身の武士団ですが、武士階級の武士より サムライ魂に殉じた男たちなのですね。 殺戮集団として恐れられていますが、それは薩長側から見ればね。 近藤勇は、国許に残した妻には頭の上がらない恐妻家。 でも、京都に現地妻を囲い適当にやっている。人間臭いですな。 そこへいくと、私の好きな「土方歳三」はかっこよすぎる。 多少浮名は流したものの、非情に徹する。 江戸幕府瓦解後の彼の行動がすばらしい。 竜馬と歳三。両極の存在ではありますが、同時代を生きた男のありようとして 私、この歳になっても関心を持ち続けています。 ●その後の「おりょう」 本名「龍子」。(西村ツル)1840(天保11)年〜1906(明治39)年 ドラマでは、竜馬の生まれ故郷に行き海をバックに 安泰に生きることを暗示させるシーンで終わっております。 が、そんな甘いものではなかった。 土佐へ渡り竜馬の実家で生活していたのは事実だが、うまくいかず、京都に舞い戻った。 しかし、維新後の京の様変わりが激しく、超有名人、竜馬の妻といえども生活は軌道に乗らない。 しばらくは竜馬の墓の近くに庵を結びそこで生活していたようだ。 その後、東京、神奈川へ行くが生活は困窮。 明治8年、横須賀の西村松兵衛の妻ツルとして入籍届けを出している。 以降、1906(明治39)年没するまで横須賀住まいであった。 この西村という男の素性であるが、大道商人、てき屋、大工、呉服商そして回船業などを営み 一時は羽振りがよかったらしい。 そんなとき、横浜の料亭で仲居として働く「おりょう」と出会い結ばれたと考えられている。 その後、西村は没落し、以後「おりょう」の貧困は生涯続くのだ。 彼女の終焉の地はいまセレモニーホール「おりょう会館」になっている。 周りは韓国人街になっていて日本語とハングル文字が混在しているような場所だ 墓は信楽(しんぎょう)寺にある。 横須賀界隈では、だれでも知っていることらしい。 ということは、小泉の純ちゃんのおじいちゃんとは西村さんは顔見知りだったかも知れないね。 なにしろ、「鳶職」から政界入りした異色の人物だから。 閑話休題 竜馬を尊敬する政治家がいたら、彼の墓前で 自分のやっていることがこれでいいのかどうか尋ねてみたら? コップの中で右往左往していたなら水ぶっかけられるよ。 |
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